「琉球提琴曲」を創り続ける大城敦博さん
沖縄・那覇出身で、現在は京都を中心に活動するヴァイオリニスト・作曲家の大城敦博(おおしろ・あつひろ)さん。
大城さんが創り上げてきた独自の音楽が、「琉球提琴曲(りゅうきゅうていきんきょく)」、または「琉球バイオリン」です。
「提琴(ていきん)」とは、ヴァイオリンを表す古い日本語。
その名の通り、沖縄の音楽文化とヴァイオリンを組み合わせ、新しい「琉球の器楽音楽」を追求しています。

「沖縄の歌を、楽器で聴きたい」から始まった音楽
大城さんは那覇で生まれ育ち、幼い頃から器楽、つまり歌ではなく楽器で奏でる音楽に興味を持っていました。
唄三線が盛んな沖縄で、「琉球民謡を楽器で聴いてみたい」と考えたことが、「琉球提琴曲」につながっていきます。
転機となったのは1993年。
左手のピチカートによる伴奏を加えて演奏した「てぃんさぐぬ花」を聴いた祖母の言葉をきっかけに、ヴァイオリンによる沖縄音楽の可能性を本格的に追求するようになりました。
クラシックをはじめ、ポップス、ロック、アイリッシュ、ブルーグラス、ジャズなど、さまざまな音楽を経験しながら独自の表現を磨き、「沖縄生まれの民族ヴァイオリン音楽」を目指してきました。
ヴァイオリン1挺で、エイサーや琉球舞踊の地謡にも
「琉球提琴曲」の大きな特徴のひとつが、ヴァイオリンそのものを使って沖縄の音楽や芸能を表現することです。
大城さんは2018年、ヴァイオリン1挺だけによるエイサーの地謡を初演。
さらに2022年には、ヴァイオリン1挺による琉球舞踊の地謡も初演しました。
その後もエイサーや琉球舞踊との共演を重ねています。
沖縄の芸能に欠かせない「地謡」を、三線などではなくヴァイオリンで担うという発想は、「琉球提琴曲」ならではの取り組みです。
6弦ヴァイパーヴァイオリンを駆使した独自の演奏
大城さんは、通常のヴァイオリンだけでなく、アメリカ・Wood Violins社製の「ヴァイパー」と呼ばれるエレクトリック・ヴァイオリンも演奏します。
自身で改造を施し、現在は6弦ヴァイパーヴァイオリンの国内における第一人者として活動。
複数の音を同時に鳴らす重音奏法や左手ピチカート、さらにループ奏法などを取り入れ、ヴァイオリン1挺から幅広い音を生み出しています。
2020年にはアメリカ・カリフォルニアで開催された「NAMM Show」に参加。
そこでの演奏をきっかけに、フランスの3Dvarius社から発売された6弦「Equinox violin」の公式広告大使にも選ばれています。
沖縄から京都へ。そして全国へ
大城さんは京都を拠点に、ライブやイベント、学校での文化鑑賞会、人権講演会、レストランやカフェでの演奏など、幅広い活動を続けています。
京都だけでなく、沖縄、東京、神奈川、大阪など全国各地で演奏活動を展開。
2025年には、京都でのヴァイオリン・デュオ公演やアイリッシュ音楽のセッション、横浜でのコンサート、沖縄・那覇でのライブなど、さまざまなステージに出演しています。
2026年も活動は続いており、5月には東京・町田で「琉球ヴァイオリン&VaGu」として演奏。
6月には浦添市のJICA沖縄での国際日系デー特別イベント、沖縄県糸満市では「西崎近隣フェスタ」に出演するなど、沖縄での演奏活動も行っています。
また、2025年3月にはFM21の「情報ピアッツァ」にも出演するなど、ラジオをはじめとしたメディアでの活動も行っています。
音楽を「残す」活動も
大城さんは演奏活動だけでなく、CDアルバムの制作にも取り組んでいます。
公式サイトでは、1stアルバム「琉球ヴァイオリン Ryukyuish Violin since 1993」に加え、現在は**4thアルバム「琉球提琴曲Ⅲ」**も紹介されています。
「海を越えてやってきた楽器は島の音楽にもよく馴染んだ」という発想のもと、沖縄の音楽と世界各地の楽器を組み合わせ、新たな音楽表現を追求しています。
「新しい伝統文化」を目指して
「琉球提琴曲」は、単に沖縄の民謡をヴァイオリンで演奏するというものではありません。
沖縄の文化を背景にしながら、ヴァイオリンという楽器だからこそできる奏法や表現を追求し、ひとつの「民族音楽」として発展させていこうという試みです。
1993年に「てぃんさぐぬ花」から始まった挑戦は、2022年には沖縄タイムスで「琉球ヴァイオリン確立」と紹介されるまでになりました。
沖縄から生まれた音楽を、沖縄だけにとどめず、京都、東京、そして世界へ。
ヴァイオリンの音色を通して、新しい琉球の器楽文化を切り拓く大城敦博さん。
「琉球提琴曲」は、これからどのような音楽へと進化していくのでしょうか。
沖縄出身だからこそ生まれた独自の感性と、ヴァイオリンという世界的な楽器の組み合わせ。
その響きに、ぜひ耳を傾けてみてください。
大城敦博さん、そして「琉球提琴曲」の詳しい活動情報は、公式サイトでご覧いただけます。

